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「パリちゃーん!!」
不意に呼ばれて振り返ると眼前に小さな足が迫っていた。
「うおおっ!?」
「かくごーっ!!」
咄嗟にパリスはしゃがみ、間一髪のところでその飛び蹴りを避けた。標的を失った小さな体は一歩先にすたん、と着地する。しかし次の瞬間、今度は低い体勢のまま足を狙ってくる。手をついて体ごと後ろに移動した。そうすると元々ある足の長さのお陰でノクスの足は届かない。顔を顰めたノクスは立ち上がってパリスの体目掛けて突っ込んできた。そして右、左とパンチを繰り出すが同じく立ち上がったパリスの腕によって右手は払い除けられ左手は掌で受け止められた。次の攻撃をノクスが仕掛ける前にパリスの手はノクスの首根っこに伸びる。そしてそのまま掴み、体重が軽いノクスはひょいっと持ち上がった。
「おっ前、不意打ちとかなしだろー」
「パリちゃん・・・!たんま!こうさーん!!」
大して力は入れてないもののノクスの体は宙に浮いてぶらぶらしている。そして少し苦しそうだった。そんなノクスをパリスは地面に降ろしてやる。ノクスは苦しさから解放され、ほうっと息を吐いてその場に座り込んだ。同じようにパリスも腰を下ろした。パリスが座るのを待ってからノクスはその場にごろんと寝転がり口を開けた。
「パリちゃん、つよいね」
「当たり前だ、本業だぜ!」
「ふいうちでも?」
「不意打ちでも」
ノクスが発する言葉は全て平仮名になって聞こえるなあと、パリスはこそっと笑う。それを当人は知ってか知らずか、うーんと伸びをした。
「あーあ、いつか、パリちゃんをたおせるくらいに、つよくなりたーい!」
「素手でか?」
「うん、そう!」
この歳の女の子にしては充分強いのに、と言いかけたがまあそれもありだと思い直して黙っていることにした。パリス的に剣を持ったり物騒な格好をしているより、有りの侭の姿で居てほしいというのも事実だった。
「ねーえ、パリちゃん」
「なんだ?」
雲一つない空を見上げながら答える。日が暮れるのが早くなってきたと肌で感じれるこの時期は、天が高くて風が気持ちいい。きっとノクスも同じことを考えているのだろう、パリスがノクスをちらっと見ると目尻に皺を作って幸せそうに微笑んでいた。
「なんでもなーい」
くすくすとノクスが笑った。とても、微睡みたくなる午後のこと。
不意に呼ばれて振り返ると眼前に小さな足が迫っていた。
「うおおっ!?」
「かくごーっ!!」
咄嗟にパリスはしゃがみ、間一髪のところでその飛び蹴りを避けた。標的を失った小さな体は一歩先にすたん、と着地する。しかし次の瞬間、今度は低い体勢のまま足を狙ってくる。手をついて体ごと後ろに移動した。そうすると元々ある足の長さのお陰でノクスの足は届かない。顔を顰めたノクスは立ち上がってパリスの体目掛けて突っ込んできた。そして右、左とパンチを繰り出すが同じく立ち上がったパリスの腕によって右手は払い除けられ左手は掌で受け止められた。次の攻撃をノクスが仕掛ける前にパリスの手はノクスの首根っこに伸びる。そしてそのまま掴み、体重が軽いノクスはひょいっと持ち上がった。
「おっ前、不意打ちとかなしだろー」
「パリちゃん・・・!たんま!こうさーん!!」
大して力は入れてないもののノクスの体は宙に浮いてぶらぶらしている。そして少し苦しそうだった。そんなノクスをパリスは地面に降ろしてやる。ノクスは苦しさから解放され、ほうっと息を吐いてその場に座り込んだ。同じようにパリスも腰を下ろした。パリスが座るのを待ってからノクスはその場にごろんと寝転がり口を開けた。
「パリちゃん、つよいね」
「当たり前だ、本業だぜ!」
「ふいうちでも?」
「不意打ちでも」
ノクスが発する言葉は全て平仮名になって聞こえるなあと、パリスはこそっと笑う。それを当人は知ってか知らずか、うーんと伸びをした。
「あーあ、いつか、パリちゃんをたおせるくらいに、つよくなりたーい!」
「素手でか?」
「うん、そう!」
この歳の女の子にしては充分強いのに、と言いかけたがまあそれもありだと思い直して黙っていることにした。パリス的に剣を持ったり物騒な格好をしているより、有りの侭の姿で居てほしいというのも事実だった。
「ねーえ、パリちゃん」
「なんだ?」
雲一つない空を見上げながら答える。日が暮れるのが早くなってきたと肌で感じれるこの時期は、天が高くて風が気持ちいい。きっとノクスも同じことを考えているのだろう、パリスがノクスをちらっと見ると目尻に皺を作って幸せそうに微笑んでいた。
「なんでもなーい」
くすくすとノクスが笑った。とても、微睡みたくなる午後のこと。
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見つけた。お目当ての後頭部は歩くときの癖なのか、小さく左右に揺れている。以前から気になっていたことがあって、思いついたときに行動しないといつまでもずるずると機会を逃しそうなので思い切って、訊ねようと彼女を探していたのだった。
「ノクス姉ッ」
呼びかけないとヒョコヒョコどこまでも歩いていってしまいそうな人。髪の毛を綺麗に躍らせ振り向いた瞳は奥深い真夏の青空の色をしている。尋ねたいことはそう、
「なあに?りこちゃん」
李杏より2歳も年上の筈だが身長は李杏の方が大きく上回っている為、必然と見上げてくる青い瞳は、太陽の光を浴びてきらきら輝いている。何時か、何処かで見たことがあるその瞳を見ると、毎度毎度胸の奥がちりっと痛くなるけれど、李杏はその瞳が左程嫌いではなかった。寧ろ、懐かしいあの夏のにおいが漂ってきそうで好きだった。気になっていること、それはその瞳にも関する。
「ノクス姉・・・気になってたこと、言ってもいい?」
「うん、なあに?」
「ノクスって言う人、知り合い?」
「え?」
ノクスは目を丸くした。あたし?と訊ねてくる。違う、と李杏は答えた。昔、よく似た瞳を持つ、ノクスという名前の人と出会ったことを話した。思ったとおりノクスは驚いた顔をした。
「その人も、ノクスっていうお名まえなんだね」
「うん、そうなんだけど・・・心当たりない?」
「うーん・・・おしり合いではないとおもうんだけど・・・」
「そう・・・ならいいや」
安心した反面、すごく残念だったような気もした。過去は忘れようと思った。ノクスが死んで、荒んでいた李杏の目の前に現れたのが、この瞳をもつ少女だった。失礼だが生まれ変わりだと思ってしまった。
前のノクスは太陽という印象のぱさぱさした金髪で、憧れだった。対照的にこのノクスは夜中を連想させる黒髪で、包み込んでくれるような安心感があった。その心地よさに身を委ね、李杏は何度も姿を重ね合わせた。違うと思っても眩しい程の瞳が李杏の心を何度も揺さぶった。
「りこちゃん?大・・・じょうぶ?」
「ん、平気」
「ねえりこちゃん。りこちゃんはきっと、その人のことがとってもとっても、大せつだったんだね」
「え・・・」
「とってもとっても大せつ、だからきになっちゃうんだね」
「・・・」
「あたしも、りこちゃんのそんな人になれるといいなあ」
「え、や・・・」
突然のことでどう切り返すこともできなった。そのままノクスはニコっと笑って行ってしまった。さらりと黒髪が揺れる。それは李杏に小さな傷と大きな安心を残していった。
「ノクス姉ッ」
呼びかけないとヒョコヒョコどこまでも歩いていってしまいそうな人。髪の毛を綺麗に躍らせ振り向いた瞳は奥深い真夏の青空の色をしている。尋ねたいことはそう、
「なあに?りこちゃん」
李杏より2歳も年上の筈だが身長は李杏の方が大きく上回っている為、必然と見上げてくる青い瞳は、太陽の光を浴びてきらきら輝いている。何時か、何処かで見たことがあるその瞳を見ると、毎度毎度胸の奥がちりっと痛くなるけれど、李杏はその瞳が左程嫌いではなかった。寧ろ、懐かしいあの夏のにおいが漂ってきそうで好きだった。気になっていること、それはその瞳にも関する。
「ノクス姉・・・気になってたこと、言ってもいい?」
「うん、なあに?」
「ノクスって言う人、知り合い?」
「え?」
ノクスは目を丸くした。あたし?と訊ねてくる。違う、と李杏は答えた。昔、よく似た瞳を持つ、ノクスという名前の人と出会ったことを話した。思ったとおりノクスは驚いた顔をした。
「その人も、ノクスっていうお名まえなんだね」
「うん、そうなんだけど・・・心当たりない?」
「うーん・・・おしり合いではないとおもうんだけど・・・」
「そう・・・ならいいや」
安心した反面、すごく残念だったような気もした。過去は忘れようと思った。ノクスが死んで、荒んでいた李杏の目の前に現れたのが、この瞳をもつ少女だった。失礼だが生まれ変わりだと思ってしまった。
前のノクスは太陽という印象のぱさぱさした金髪で、憧れだった。対照的にこのノクスは夜中を連想させる黒髪で、包み込んでくれるような安心感があった。その心地よさに身を委ね、李杏は何度も姿を重ね合わせた。違うと思っても眩しい程の瞳が李杏の心を何度も揺さぶった。
「りこちゃん?大・・・じょうぶ?」
「ん、平気」
「ねえりこちゃん。りこちゃんはきっと、その人のことがとってもとっても、大せつだったんだね」
「え・・・」
「とってもとっても大せつ、だからきになっちゃうんだね」
「・・・」
「あたしも、りこちゃんのそんな人になれるといいなあ」
「え、や・・・」
突然のことでどう切り返すこともできなった。そのままノクスはニコっと笑って行ってしまった。さらりと黒髪が揺れる。それは李杏に小さな傷と大きな安心を残していった。