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楽しい時ってどんな時?

愚痴ってしまった。最初は眠そうだなっていう話だった気がする。其れが何時の間にか疲れの原因の話になって、気が付いたら悪口染みた話になってしまっていた。
あっと思ったがもう遅い。きっと今、私は凄く可愛くない顔をしてる。一番見せたくない人の前で。
急に口を噤んだ無花果を見て、空は不思議そうな顔をした。

「どうした?」
「…なんかさ、」
「うん」
「なんか、今の自分、やだなあっておもって…」
「そう?」
「うん…」
普段から悪口は言わないように気をつけているのに、気を抜いてしまったらこれだ。つまり根っこがそう言う性格というわけか。とても醜くて汚らしい。やだな。

「愚痴聞きにきた訳じゃないのにね、ごめん」
「いや、別にいいけど」

空は視線をずらしてふと何か考えている表情をする。
優しいなって思う。きっと優しさに甘えてるんだと思う。そう言う風に言わせる空気にしてるんだと思う。ああ、嫌だなって思う。

「あのさ、」
「うん、何?」
「無花果は嫌かもしんねーけど、俺、愚痴聞くの嫌じゃないよ」
「…どうして?」
「無花果の負担が少なくなるなら逆に聞いてあげたいし、いつもどんな風に感じて生活してるんだろうなってわかるし、わかったら嬉しいし、もっと知りたくなるし…あ、でも一番はやっぱさ、」

唾を飲み込むように空は一呼吸置く。まだ途中なのに。途中なのに、嬉しすぎて、涙が出そうになる。だって、こんな、こんな、


「無花果との話なら、内容が何であれ、楽しいし」

たくさん嬉しい言葉をくれる空が好き



たのしいときってこんなとき
(「…はずかしくならない?そんなこと言って」「…ちょっと」)
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少女は空を見上げていた。帽子の鍔が邪魔なのか少しだけ、上にずらして。

なら被らなきゃいいのに。言いたかったけど、やめた。

その代わりにあたしはその小さな体に近づいて違う言葉を投げかけた。



「生きることに疲れたって感じたことある?」


突然の問いかけに少女はは一瞬目を丸くさせた。今の天気を映し出したような、まるいそら。深く、深く。



「…あるよ」


少女は、笑った。


驚いてどうしたのって言ってくれた方がましだったかもしれない。
なのにどうして、そうじゃないから、あたしは態と目をそらしていた自分の愚かさに気付いてしまった。ああ、あたしもこの子みたいに綺麗に笑えたらいいのに、って自分の醜さも知ってしまった。
「あ、りこちゃーん!!」
「げ、ななな何だよ!!」
「いっしょにかえろ?」
「…ッ今友だちいねーからいーけど…ッあんま外で話しかけンな…」
「どーして?」
「どうしてもッ!!」
「んー…わかった!!だからいっしょにお家かえろう?」
「…分かッたよ」
「わあい!!りこちゃんとかえるのひさしぶりだねっ!!」
「……そーいえばッ、変な噂、聞いた」
「んっ?」
「…お前小1に学力負けてるって本当…?」
「え、ええちがうよ!!うそだもん!!」
「職員内で真剣な会議されてるッて言うのは」
「ちがうって!!あたしはただ、おおかみさんがきたら、うさぎさんがこわくてにげちゃうから、のこったのは、おおかみさん一ぴきだねって、言っただけだもん!!」
「…それってつまり足し算出来てないッてことじゃねェか!!」
「でもうさぎさんこわいんだよう!?」
「何か…教師の苦労が分かった気がする…」
「どうしてええ!?」
「…最近お前の担任疲れてんのその所為じゃねェ…?」
「うん、おつかれだよねえ…あたしのうさぎさんかしてあげよーかって言ったのにね」
「…お前、それも校則違反とかになんねェの、うさぎ…」
「えええ?だってひとり、おいてっちゃったら、うさぎさん泣いちゃうじゃん!」
「…感情の起伏はうさぎからくるモンなの?それともただの馬鹿?」
「バカってひどいなー!!りこちゃんまでそんなこと、言うのー!?」
「後は誰に言われたの…」
「えっとー?しゅんちゃんでしょー、みやちゃんでしょー、えっと、あとはね…(指折り」
「…もういいから…」
旋毛を見ていたら何となく頭を撫でたくなって、序でに髪の毛に触れてみる。見た目とは裏腹に柔らかくてさらさらしてて手触りがよかった。凹凸少ないこの性分みたく、ペットが飼い主に似るように各部もそうなのかと考えた。そう言う定義でいくとさらさらヘアの所謂感情起伏の少ない張本人は急に髪を触られても特に驚きもせず気にする風でもなく、ちらと大きな手に一瞥をくれるだけで何も言わなかった。

「あんたは凄いな」
「何がさ」
「いや…よくわかんねーけど」
敢えて言うなら、幸せそう?
声に出して言ってみたら、珍しく声をたてて笑った。
「言われたんだろ?こないだ」
「うん?ノクスのことか?」
「ん」
「この間ってか、ずっと前から言われてんな」
「まじで」
「まじ」
「分かれよ、そろそろ」
「いや、分かってっけど」

幸せそうなんて失礼な言葉、他にあるだろうか。その人の内面も見てない癖によく言う。でも外に剥き出しになってないものなんて所詮誰も考えないのじゃないだろうか。自分が思ってる以上に他人なんて理解出来てない。だから“今”見たから、幸せそうって言う感想を述べるんだろう。

「無理してないだろ、全然」
「しない」
「そー言うのが」
「んー」

正直どうでも良さそうでと言うより今話してたことすら明日になったら忘れていそうでさらさらなのもどうかと思った。でも否定はしないなら“今”の印象だけで判断してもよかったのかも知れない。…人間ってよく分からない。


「幸せ」
「は?」
「あってる」

今まで合わなかった目が初めて通い合わさった。冷たさと暖かさが入り混じった瞳を見て、やっぱり全ての細胞から人が出るのは間違ってないと思った。

「…やっぱりお前凄いな」
「んー」
「ていうかさ…やっぱやめとくわ」
「そ」

いや、そこは食い付いてくるとこだろと言いたかったけど、今日のところは“さらさら”に免じて許してやることにした。
小さな小さなこの国で、大規模な内陸地震が起こってから約三年。
住みよい街になったかは分からない、でも彼女の知らない景色になっているのは明らかだった。グローバルなこの世界、格差が広がったこの社会を、彼女が見たら悲しむだろうか。いや、彼女は笑うだろう、幸せなら関係ない、といって。笑顔の裏に哀愁を漂わせて。

彼女の家の地面は地殻変動によって、ぱっくり割れてしまった。彼女も、彼女を養っていた人も、崩壊した家の舌に埋もれた。顔見知り程度のお付き合いだったが、僕にとってとても大変なことだった。幸せを分け与えてくれる素敵な子だと言われていた。誰かは天使だと言っていた。けれど僕は天使とは思わなかった。神さまだと思った。
彼女が笑うだけで、周りに華が咲いたよう、その幼い手に触れられただけで今までの罪を全て許して貰っているよう。そんな人、今までに居なかったから、本当に神さまだと思った。
そんな神さまのような子が、今、地に埋まっている。
僕は唇を噛んで、心の中で唱えた。
人を幸せにする人が、みんなを悲しい顔にしてもいいのか。みんなを笑顔にするんじゃないのか。
間違った先入観から、非難がましい言葉になっていた。でも其れ位、彼女には憧れでいて欲しかった。

彼女たちの救出には、多くの時間が費やされた。信じて待っていようと決めたのに、救出よりも先に心が折れてしまいそうだった。
それでも彼女は還ってきた。その吉報は、沢山の人を幸せにした。やはり彼女は神さまなのだ。僕の心のヒーローだった。
一人の男に抱えられて出て来た彼女の顔は、頭半分程覆ってしまう位の怪我、そこからの流血で、歪んで見えた。其れが血だけの所為ではなかったと気づいたのは、愚かなことにごく最近になってからだった。

意識が戻った彼女が一番初めにしたことは、辺りを見渡すことだった。どんな安堵の瞳にも反応せず、遂に何かを諦めた彼女の口が小さく開き、パクパクと言葉を刻んだ。

  まもれなかった、

無音が響いた。歓喜に沸いていた大勢の人たちは一瞬にして静まり返った。きっと彼女の親のことだと悟ったからだろう。でも僕はそのときの言葉は、彼女の親を含めて其処に居た全ての人に向けた言葉であって、あれ以上の人を思う気持ちはないんだろうと、あの時も、今も、ずっと信じて疑わないでいる。


彼女は別地区の大きな病院に入院した。僕は彼女の病室に通い詰めた。誰よりも先に会いに行きたかったから、朝一番に駆け出して、息を切らしても、看護士さんに注意されても、毎日のように一番乗りで彼女の病室の扉を開けた。何時だって、彼女は笑って出迎えてくれた。
其れが僕の習慣だったように、彼女にとっても習慣になっていればいいのに、と思った。
彼女の耳はもう聞こえなくなってしまったから、手話を練習する合間合間では、二人で黙って空を見た。彼女は桜を見るのも好きだった。
蕾がなって、青葉が生えて、どんどん木が禿げていくのを、ずっとずっと見守っていた。けれど毎年のように桜の木が遠ざかっていくのを、彼女はどういう思い出見ていたのだろう。もう枝先しか見えなくても、ずっと笑っていたけれど、自分の身体のことだからもう分かっていたのかもしれない。

それでも僕は、まだチャンスがあると思っていた。
もう一度彼女の声が聞ける。
だって彼女は神さまだもの。
きっと、笑顔になるような何かを用意してくれる…



彼女の最期はとてもあっさりしていた。
彼女は僕らの記憶以外には何も残さなかった。彼女の愛らしい声さえも。
彼女の耳がいつか聞こえるようになったとき、直接言おうと決めていた言葉は、意味を持たないただの文になってしまった。其れは、彼女に受け取って貰えないと、存在の価値すらないように思えた。



彼女が入院していたとき、毎日のように顔をあわせていた看護士さんから小さな紙切れを渡されたのは、それから数日後のこと。
誰からとも言われなかったし、誰宛とも言われなかった。
なんとなく、分かった気がした。
そっと覗き込んでみたら、宛名も差出名もなくただ、一言、

  だいすき

大小ばらばらで揃ってない不恰好な字。
誰かが天使と言った幸せを呼ぶをは、最後の最後まで、人を笑顔にさせることを忘れなかった。終わりの言葉でさえ、無音であったけど。

もう一度輝きだした、彼女への贈る言葉は、今、言ってしまうべきだと思った。
きっと、届くだろう。大好きな、彼女へ。








ありがと


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